───コンコン───

数学準備室のドアをノックしているのは、谷沢ツバキ。



事の事情を知り、我慢ならなかったのだ。



「はい。」



中には、崎冬馬がソファに座っていて、いかにも休憩中ですとアピールするようにタバコを吹かしてした。



「崎先生。話があるんだけど。」
「何?長くなるのはごめんだよ。」


ツバキはどかどかと部屋へ進むと、ボスッと音を立てて、向かいのソファに座った。

「何?立宮にコクられたことで相談?」

「ちげーよ。あたしはもう返事を出したし、あんただってあたしがここにきた理由をわかってるはずだ。」



崎冬馬は、最後の煙を吐き出すと、吸い殻を潰しながら言った。



「……雅のことか。」

「なんで、止めなかった?」



「家に帰るのを止めてどうしろと?
別れを切り出されて、大声で呼び戻せるか?俺の立場で?
大騒ぎだな。教師が生徒に手ぇ出したってか?!
………今後会えるかどうかもわからなくなる。」



ツバキは崎冬馬の目を見た。寝てないのかと思えるほど充血している。