「ハイハイ。すみませんでした!
邪魔者は帰りますよ!

バイバイ、ナデシコちゃん。またね!」

果南斗は、風のように去って行った。










─────

時計の音が響くほど、部屋は沈黙に包まれていた。



その沈黙を破ったのは、ナデシコだった。

「本当なの?今のこと。」


気まずそうに崎冬馬がはにかむ。

「まーな。俺も荒れてたし。」


「じゃあ、恵理香さんって元カノなんだ。」

「とりあえずは。」


淡々と質問と応答が続く。

「じゃあ、会いに行けばいいでしょ?!
果南斗さんが知ってるってことは、ホステスのきれいなお姉さんなんでしょう?
あたしなんかより、細身で白くて、美人なんでしょう?!」



ナデシコは涙目になっていた。


「雅……?」

「なんですか!」

「お前、妬いてんのか?」

「………えっ?………ハァ?!
そんなわけないじゃない!」





図星だった。
とうとうナデシコは、崎冬馬に八つ当たりした。



「だって、好きになったの初めてって言ったじゃない!
あたし以外の女の人と付き合って、デートして、キスして……

やだ!そんなの嫌なの…!
知りたくなかったっ……知りたく……な…かっ………!!」



涙を流して、ベッドの上で座ったままナデシコは言った。

泣いて、泣いて、



そしてついに……





「取り乱して、すみませんでした。
だけどもう無理です、やめましょう。
さよなら……」



ナデシコは足早に家を出ていった。



「おい!!」



引き止めようとする崎冬馬の声も、虚しく響くだけだった。