崎冬馬は微笑むと、力強くナデシコを担ぎ上げた。
そして、近くの店員に声をかけ、店を後にした。
─────
─────崎冬馬は歩いていた。背中には暖かく、愛しいものを背負って。
それは静かに息をたて、目をうっすら開けて崎冬馬を見ている。
「ねぇ、先生。」
「?」
「今日、一緒に寝てくれる?
なんか怖いよ………」
「なんかしてもいいならなー」
崎冬馬は冗談めいた口調で言う。
「ん……。いいよ。
先生だったら、キス、怖くないし。」
(キスかよ……)
崎冬馬は思わずつっこむ。
そう思いながら、なにか引っ掛かり、足を止める。
「俺となら……って、お前、他の野郎ともしたことあんの?」
自然と声が低くなる。
「ううん。
何度か無理やりされそうになったの。その時すごく怖くて。
男の人が少し苦手かな。」
「ふーん。」
「でもね、先生は…好き。」
「そうか……」
崎冬馬は、また足を進める。
内心は、安心していたのだった。