───プルル───
崎冬馬は、数学準備室のソファから手を伸ばして、机の上を探る。
携帯を開いて、画面を見た崎冬馬は、どうして携帯を見てしまったのかを悔やんだ。
「……ハイ。ダレデスカ?」
抑揚のない声で応答。
無関心で対応。
作り笑顔で接待。
崎冬馬の原則だ。
「─相変わらずね、冬馬。わかってんでしょ?」
「なんか用っすか」
「─用って……」
───ガラ───
ドアを開けたのはナデシコだった。
「崎先生!!」
「あ゛?ちょ、待て雅。」
「─明後日、帰国するから。」
「はぁ゛?!」
「ねぇ、相手だれ?」
「母親!」
「─おぉ?女の子の声が聞こえたよ?」
「あ゛ー!もう、どっちもうるせーよ!
母さん、俺の家には泊めねーからな。さいなら、父さんにヨロシク。」───ブチ─
崎冬馬は、勢いよく携帯を切って、机に放り投げた。