「わけのわからぬ人間を、大勢近くにおいていては、命がいくつあっても足りぬからな」

それは、食堂での何気ないやりとりの中で、イリアが発した言葉だった。

一番わけのわからない人間は、他ならぬユーリだと思うのだが、そのあたりはどうなのだろう。

「殺されかかったことでも、おありなのですか?」

アルミラは大陸一の強国だが、イリアの上には三人も王子がいるのだから、そうそう命を狙われるとは思えない。

小心者とあざ笑いたい気持ちを隠して訊ねてみたが、イリアは何も答えなかった。