「どうなっているの!?」

ヒステリックな金切り声が王宮に響いたが、答える者はいない。

「城壁はどこも破られていないのに、どうやって市街に入り込んだの? 統率が取れていないければ、烏合の衆だって言ってたじゃない!」

つかまれた腕をがくがくと揺さぶられ、グノーは仕方なく口を開いた。
「調査中です」
「調査中!? 何を悠長な!」

豪奢なドレスを身にまとった赤毛の女が目を血走らせて叫ぶ傍らには、彼女の実の弟であるカリノ家の当主、つまりはグノーの叔父にあたるはずの男が、おろおろとした面持ちで立っている。 

二人がただならぬ関係にあることは、誰の目から見ても明らかだった。

マルグリットは前王の側室の一人でありながら、王の寵愛が薄れていたことを理由に、ほとんど実家に入り浸り、実の弟と関係を持っていた。

そして今、前王に虐待されていた哀れな側室を演じ、グノーを通じて革命軍を資金的に援助していたのは実はカリノ家だったと、ありもしない話をでっち上げ、当たり前のように権力の座におさまっている。