「たしかにひどい母親だな」

イリアは鷹揚に頷いた。

(お前もひどいけどな)

心の呟きはもちろん相手には届かない。

「そうでしょう! ね、だから私に力を貸して! 死ぬなんて、くだらないことをお考えになるのは、おやめになって、ね、男色家なんて嘘なんでしょう?」

蟲惑的な瞳を向けられて、イリアの唇がかすかに歪む。
どうやらこの女はこの世の全ての男が自分になびくと思っているらしい。

(誰かこの勘違い女を何とかしろ)

心の呟きはおくびにもださず、イリアは頬杖をついたまま、笑みを深くした。