「こ、ここにロープがある。僕が踏み台になるから、君はロープの端を腰に結んで塀を乗り越えて、向こうの木の幹に、これを結んでくれないかな」

大変なことになってきた。

「この塀を、私が、ですか?」

こくこくと笑顔で頷かれても困ってしまう。

この塀の向こうは、第三離宮の敷地であり、ユーリが足を踏み入れたことのない世界なのだから。