あの日を堺に、先生と少しずつ話すようになった。

一ヶ月経った今、元彼のことも先生のお陰で大分気にしないちようになってきた。

その代わり、麻紀は先生に恋をしていた。

笑うと可愛いところも、余裕なところも、みんな好きになってしまった。

先生が生徒である自分を恋愛対象として見てくれる訳がないと、頭の中では分かってい

る。

だけど、想いは止められなかった。

先生が好き。

それは、先生には黙っておこうと思っていた。

ところが、そうもいかなくなった。

昨日、三年の先輩が先生に告白したという噂を耳にしたのだ。

いてもたってもいられなくなって、放課後、麻紀は先生のところへ向かった。

先生はいつも準備室にいる。

今日も予想通り、先生はそこにいた。

「先生、桜井です。」

ドアをノックすると、中から「どうぞ。」と声がして、、麻紀はドアを開けた。

「桜井。めずらしいですね、どうしたんですか?」

回転椅子に腰掛けたまま、先生が麻紀を振り返る。

先生の片手には、煙草。

思わず、ドキッとしてしまう。

「ん?」

じーっと先生を見つめる麻紀に、先生は首をかしげる。

困った。

どうしたと言われても、なんて言えば良いのか分からない。

巻きは、何をしに来たのだろうと思った。

先輩が先生に告白したから何なのだ。

先生にわざわざ「何て答えたのか」を訊く権利など、果たして麻紀にあるのだろうか。

冷静になって考えてみると、いろいろとおかしいことに気付いた。

先生は困った表情をしている麻紀に優しく声を掛ける。

「おいで。」

どこに隠してあったのやら、先生が麻紀に椅子を差し出した。

麻紀は悩んだ挙句、座らせてもらうことにした。

ふと、先生が向かっていたデスクを見ると、たくさんの資料が並べられていた。