朝。

起きるといつもと何ら変わらない景色が広がっていた。

やっぱり死ななくて良かった。

あの人がいない今も世界はちゃんと廻っていて、麻紀にもちゃんと朝が来る。

だけど、学校に行くのはちょっと憂鬱。

あの人がいるから・・・・・・。

今まではあの人に会いたくて学校に行っていたようなものなのに、今日からはあの人に

会いたくなくて学校に行きたくないなんて・・・・・・変なの。

麻紀は、制服を手に取り、パジャマを脱ぎ捨て、着替える。

シャキっとしよう。

あの人のことは忘れよう。

そう自分に言い聞かせて家を出た。

朝食は、食べたくなかった。

いつもと変わらない通学路。

一人で歩くのは、すごく静かだった。

ふと、昨日の人を思い出してみる。

麻紀を助けてくれたあの人。

とても、かっこいい人だった。

もう会えないのは、何だか惜しい気もする。

でも、もう会うことはないだろう。

―そんな風に、元彼のことやあの人のことを思い出しながら歩いていると、いつのまに

か学校に着いていた。

重い足取りで階段を昇っていく。

教室の前に来た時、廊下から元彼の声がした。

麻紀は、慌てて教室に入る。心臓がバクバクいっている。

―会いたくないっ!

あまりにも勢いよく教室の中に入ったものだから、一瞬、教室内の視線が麻紀に集中し

たが、麻紀が顔を上げると、皆何事もなかったかのように視線を元に戻した。

「麻紀、おはよ」

席に着こうとしている麻紀に、幼なじみの日和(ひより)が話しかけてきた。

そして、やっと心臓の音が静まった。

「おはよ」

小さく溜め息ををつきながら、言葉を返す。

「麻紀、何かあったの?すごい険しい顔してたけど・・・・・・」

日和が、心配そうに麻紀の顔を覗き込む。