「だって、麻紀は九十点以上取れたら成績も上がるし、先生ともデートできるし一石二
鳥じゃん?でも先生は麻紀とデートしたいって願ってるわけじゃないだろうし、麻紀が点数取れなかったら何もないじゃん。この約束って、ちょっと対等じゃないよね。」

麻紀は何も言い返せなかった。確かに日和の言う通りだ。

「・・・・・・じゃあ、どうして先生はこんな約束を・・・・・・?」

すると日和は肩をすくめた。

「わかんない。先生に直接訊けばいいじゃん。きっと教えてくれるよ。」

麻紀は少し考えてからあきらめたように言った。

「うん、明日訊いてみる。」



「え?どうして約束したかって?」

準備室で薬品の整理をしていた先生が少し驚いた顔で麻紀を振り返った。

麻紀はコクンと頷いた。

「だって、先生にとってメリットないじゃないですか?」

先生がくすくす笑う。

「おもしろいですね、桜井さん。そんなこと言われるとは思っていませんでした。」

何だか恥ずかしくなった麻紀は少し頬を紅く染めて下を向いた。

「そうですねぇ。桜井さんとデートできます。」

顔を上げると先生がいたずらに笑っていた。

その余裕たっぷりな態度がくやしくて麻紀は少し困らせてやろうと思った。

「先生は、私とデートしたいんですか?」

先生は一瞬キョトンとしただけで、またすぐにふわっと笑った。

「さぁ、どうでしょう。」

それもまた余裕な対応で麻紀はじれったくなる。

「答えてください!」

子供みたいに催促する麻紀を見て、先生は自分の口元に人差し指を立て微笑った。

「すみません。俺も教師なので、それはヒミツです。」

その時先生がなんだかムショーに可愛くて、麻紀は思わずキュンとなる。

それを鋭く見つけた先生がいたずらっぽく笑って言う。

「顔が赤いですよ、どうしました?ん?」

麻紀はくやしいやらはずかしいやらで、心がぐちゃぐちゃしてきた。

「~なんでもないですー!!」

そう言いながら、先生には敵わないと改めて実感した麻紀だった。