先生の目は、麻紀の心を見透かしているようだ。

ドクン、と心臓が波打つ。

「どうします、約束しますか?」

先生と目が合う。

「あなたが九十点以上取ったらデートします。さぁ、どうしますか?」

そんなの、考えるまでもない。

「絶対デートしてもらいます!!」

「交渉成立ですね。では、頑張ってください。」

先生は終始、楽しそうに笑っていた。



「とは言ったものの・・・・・・。」

「あんたねぇ!こんな問題も解けないで、九十点以上なんか取れるわけないでしょ!?」

麻紀は先生と約束した日の夜から、泊り込みで日和に勉強を見てもらっている。

麻紀は文系、日和は理系。

だから、麻紀の家庭教師がてら、いつも苦手な教科を教えてもらっている。

逆に、日和の苦手教科は麻紀が教えてあげている。

つまり、お互い様なのだ。

休憩中、テーブルの上のお菓子をつまみながら日和がいじわるを言う。

「先生、絶対無理だと思ってそんな条件出したんじゃないの?」

「そんな人じゃないし!」

い~っと口を横に開いて、麻紀もお菓子を口に放り込む。

日和には"先生に彼女がいる"と聞かされたあの日から、先生との間に起こったどんな些

細な出来事も全て話している。

「でもさぁ、こーんなに理解できてないなら先生に補習してもらえば良かったのに。そ

したら一緒にいられるしさぁ。」

日和が不思議そうに麻紀を見つめる。

「だって、先生は私一人に頑張って欲しかったんだと思うの。"あなたの本気が知りた

い"って言ってたし。」

麻紀の言葉に日和は「ふうん。」と頷いて、それからまたふっと疑問がわいてきたみた

いに訊ねてきた。

「この約束って、先生に何かメリットあるの?」

「メリット?」