「なるほど。じゃあ、もっと授業でも応用問題を出すようにしましょう。」

ふむ、と頷いて先生は腕を組んだ。

「先生・・・・・・?」

「ん?」

「私、頑張ります。」

「はい、頑張ってください。」

「だから・・・・・・。」

麻紀は少し息をついた。

そして、言う。

先生の優しい笑顔が、困った表情にならないことを願って―

「八十点以上取ったら、ごほうびください!」

「ごほうびとは?」

「・・・・・・私と、デートしてください・・・・・・!!」

勢いよく麻紀は頭を下げた。

顔は赤くなるし、妙な汗もかいてきた。

これが、麻紀の願いだった。

「・・・・・・桜井さん、そんなに俺のことを・・・・・・?」

声だけじゃ、先生がどんな表情をしているのか分からない。

もどかしくなって、麻紀は思わず顔を上げた。

先生は、真っ赤な顔をして見つめてくる麻紀を見て、少し照れた表情で笑った。

「・・・・・・いいですよ。ただし!八十点ではなく、九十点以上取ったらということにしてい

ただけませんか?」

思いもよらぬ返事だった。

期待はしていたけど、絶対に断られると思っていた。

でも麻紀は、一つ不思議に思ったことがある。

「なんで点数上げたんですか?・・・・・・私とデートしたくないからですか?」

すると先生は、にっと笑って言った。

「そんなんじゃありません。ただ・・・・・・。」

そこで区切って、先生はちらりと麻紀を見た。

「あなたの本気を知りたいのです。」