四時間目の先生の授業の終チャイムが鳴って、麻紀は先生の側に行った。

先生は困るのかな、と思ったけど、側に言ったら優しく微笑ってくれたから麻紀は安心

して会いに行けた。

「どうしました、桜井さん?」

先生がいたずらに笑う。

麻紀は、先生のこの笑顔が大好きだ。

「用がなきゃ、側に来ちゃいけませんか?」

麻紀はわざと子どもっぽく言った。

先生は大人の余裕の微笑みを見せて肩をすくめてみせる。

「いいえ。どーぞ、好きなだけいてください。」

隠して嬉しそうに笑う麻紀を見て、先生は可愛く思った。

「そういえば、桜井さんは俺の授業分かります?」

先生の質問に、麻紀はギクっとした。

ちらり、先生を見ると結構真剣に聞いていた。

「わ、分かりますよ・・・・・・?」

麻紀の目が泳ぐ。

先生は、にやりと笑って言う。

「そうですか。では、来月の定期テストでは八十点以上取ってくださいね♪」

「無理です!八十点なんて・・・・・・だって私っ・・・・・・。」

"いつも六十点台なんですよ!?"言いかけて止めた。

自分の馬鹿さ加減を言うなんて、それこそ馬鹿馬鹿しい。

先生は、にっこりと作り笑う。

「大丈夫。頑張れば点数は取れます。さぁ、Let’study♪」

何故急にこんなことを言い出すのか、麻紀は全く理解できずにポカンとする。

そんな麻紀に気付いたのか、先生は薬品を片付けながら言った。

「俺も、一応教師なんでね。一人でも多くの生徒に良い点を取ってもらいたいんです

よ。」

「・・・・・・でも、化学わかんないもん。」

麻紀が、口を尖らせて呟く。

「さっき、分かるって言ったでしょう?」

「授業は分かる!分かるんですけど・・・・・・。」

「じゃあ、何が分からないんですか?」

「・・・・・・応用問題みたいな・・・・・・。」

先生は、馬鹿な自分をどう思っているのだろうか。