あの朝、複雑な気分で登校したら、二階の準備室の窓のところに人影を見つけた。

先生だった。

最初は、何をしているのかわからなかった。

先生は、何だか落ち着きなく校門を見つめている。

そして麻紀が校門をくぐった直後、先生は安心したようにホッと胸をなでおろしてい

た。

その微妙な変化を、麻紀は見逃さなかった。

先生は自分を心配してくれていたのだと、実感した。

先生のそういう何気ない優しさが大好きだ。

もし、先生と目が合ったら笑って挨拶しよう。

一歩ずつ、先生に近づいていく。

憂鬱から、晴れ晴れとした気分に変わっていく。

準備室の下まで来た時、麻紀は言う。

「おはようございます。」

先生にしか聞こえない挨拶。

麻紀にしか見えない、手を振った先生。

やっぱり大好きだなあって、そう思ったんだ。