月曜日。

先生はそわそわしながら、準備室の窓から登校してくる生徒たちを注意深く見ていた。

先生は何も言わなかったが、麻紀が街で自殺しようとしていたのを覚えている。

理由は、麻紀の態度を見ていてなんとなく分かっていた。

だから、自分が麻紀を振ったことで、そういうことが起きるのではないかと心配してい

たのだ。

そして、校門付近に一人で登校してきている麻紀の姿を見つけた。

先生はやっと安心して、息をつくことができた。

煙草を吸おうとシャツの胸ポケットに手を入れて箱を取り出すが、中は空だった。

ふと、灰皿に目をやると四本も吸殻が転がっていた。

無意識のうちにそんなに煙草を吸っていた自分に苦笑した。

麻紀が登校してきたことを確認し終えた先生が、準備室の窓を閉めようとした。

その時先生は、麻紀が下から準備室にいる自分を見上げているのに気が付いた。

すると、麻紀はにこっと笑って小さく「おはようございます。」と言った。

先生は驚いた。

麻紀は、絶対に自分を避けると思っていたのだ。

しかし、予想は外れた。

先生は麻紀にだけ分かるように、小さく手を挙げて微笑った。

それに気が付いた麻紀は嬉しそうにはにかんで、校舎の中へ駆けていった。

何だか気分が良くなった先生は、ふっと独りでに笑って準備室を後にした。