そして、煙草に火をつけようとして手を止めた。

「吸っても?」

先生は麻紀を気遣ってくれたのだ。

麻紀はそんな些細なことも嬉しかった。

「どうぞ。・・・・・・先生って、いくつなんですか?」

麻紀は何気なく言った。

先生は早速煙草をふかしながら「そうですねぇ。」と呟いた。

「いくつに見えます?」

「えー・・・・・・。」

麻紀は困った。

先生はかなり大人っぽい気もするが、笑顔にまだ幼さを感じる。

二十歳と言われても驚かないし、三十歳と言われても素直に受け止められる気がする。

悩んだ挙句、麻紀が出した結論はこうだ。

「いくつにも見えますけど・・・・・・えぇっと、二十四歳くらいですか?」

先生はわざとらしく驚いたように目を丸くさせて言った。

「正解です。お見事ですね。」

だけど、先生の言い方や表情があまりにもわざとらしくて、つい疑ってしまう。

すると、麻紀の視線に気付いたらしい先生がさりげなく言葉を付け足す。

「本当ですよ。二十四です。あなたから見たら、ただの"オジサン"ですね。」

麻紀には"オジサン"という先生の言葉が引っ掛かって、気付いたら自分でも驚くくらい

の大声を発していた。

「先生は全然オジサンなんかじゃありません!!私と八つしか違わないじゃないですか!!

先生はまだまだイケますっ!!!」

勢いに任せて何を言っているのだろう・・・・・・。

イケるとは何だ。

教師に向かって言う言葉じゃないだろう。

麻紀は後から押し寄せてくる後悔の波に飲み込まれないよう、口元にぐっと力を込め

る。

先生は、そんな麻紀を見て優しく笑った。

「ありがとうございます。・・・・・・そうですか、八つ違ってもオジサンじゃないんです

ね。なるほど・・・・・・。」

先生の最後の言葉が気になる。

先生は本気で何かに納得しているようだった。