あの人とは、高校の入学式で初めて話した。

たまたま、隣の席になった。

たまたま、話すようになった。

たまたま、好きになった。

"たまたま"ばっかりだったけど、それでも両想いになれたのが嬉しくて、全部"運命"だ

と思った。

麻紀にとってあの人は初彼だったから、いろいろなことにいちいち戸惑ってしまったけ

れど、その度に優しく微笑みかけてくれるあの人が大好きだった。

あの人と一緒なら、何も怖くない。

本気でそう思っていた。

だけど、ついに別れの時が来てしまったのだ。

全く予想もしていなかったと言えば、嘘になってしまう。

時折、あの人が見せた疲れたような表情。

それを見ると、不安ばかりが心に積もった。

自分のことを面倒だと感じていることは、薄々気付いていた。

でも嫌われたくなくて、必死に笑顔をつくった。

何としても、あの人と一緒にいたかった。

だから、別れを告げられた時は、ショックで心臓が停止してしまいそうになった。

目の前に何も見えなくて、世界でただ一人とり残されたような、とてつもない孤独感が

麻紀を襲った。

もがいても、誰も助けてはくれない。

押し寄せてくるのは、不安の波。

あの人と一緒じゃなきゃ、生きている意味がない。

一瞬、本気でそう思った。