「・・・頼むから、少しの間このままでいて?」


いきなり低くてでも甘い声でそんなセリフを言われ、気が気じゃなくなる。


・・・なんでそんな甘い声だすの?


そんな声でお願いされちゃ、何もできないよ。

あたしは振りほどこうとした手を小川の腕からはなした。


『・・・わかった』


まだちょっと納得はいかないけど、そんな声でお願いされちゃうんだもん。

ずるいよ、いつもは意地悪とか言うくせに。


「ありがと。椎名って冷たくて気持ち―・・・」


ぼっ。

なんだか恥ずかしい事言われた気がして勝手に熱くなる頬。


でも良かった。小川は気づいてないみたい。


そっと胸をなでおろそうとしたとき。

「なあ・・」


いきなり出た声におさまりかけた鼓動がまた激しく動き出す。


「颯って呼んで?」


『は?』


なんであたしがそんなことを?


「1回だけでいいから」


また甘い声で言うんだね。


『・・・は、颯・・』


「うん・・・、おやすみ、椎名・・・」