「泣いてない」


見られてたのか。気づいていたのか。
後ろめたい気持ちと見られたくない気持ちで私から視線をそらした。


「眠かっただけ」

「嘘つき」


ユウスケの言葉が突き刺さる。私の顔を両手で包んで自分の方へと無理矢理向かせた。近くにあるユウスケの顔に胸が跳ねる。

こんなに明るい時間に、こんなに近くでユウスケの顔を見るのは初めてかも知れない。


「意味わかんない、っていうか入ってこないでよ勝手に、待っててって言ったでしょ」


ユウスケのまっすぐな視線に耐えかねてユウスケの手の届かないように一歩後ろに下がって手を払う。

見るな。こんな明るい場所で。私を見ないで。


「こっち向け」

「イヤ」

「向けって」


無理矢理に顔をつかまれてまた振り向かされる。


「何で泣いてんだよ?」


頬を伝う涙の理由なんか、私が教えて欲しい。


「泣いてない」


さすがに無理のある嘘だけど、理由が分からないからそう答えた。

ほら、だから昼間は嫌い。夜がいい。夜だと泣いてたってあんたは気づかないから。
闇の中に隠れて泣いててもあんたは気づかず腰を振るから。


「お前、鏡見てその台詞言えるか?」


嫌味な言い方しないでよ。
そう言いたげに泣きながらむすっとした顔を作った。


「ほっといてよ」

「何で泣いてるのか聞いてるんだよ」


うるさいうるさいほっといてよ。わからないんだから。
あんたなんて体だけが目当てなんでしょう!?私に興味もないくせに!


「出てってよ」

「やだ」

「もう出てってよ」

「いやだ」


お願いだからこれ以上私の中に入ってこないで。