ピアノなんか大嫌いやったけど……

それが大雅との出会いやったんやと思うと、習ってて良かったと思える。



うん。

確か、私は全然練習せーへん子で、かなりの問題児やった。




「それからずっとストーカーしとったん?」



「あほか。小学生でストーカーなんかせんわ」



大雅は、私の頭を叩こうとしたのに、途中でやめて優しく撫でてくれた。



まじで彼氏みたいやん。


大雅ったらぁ!!




大雅はそれからずっと私のことを心の片隅に置いててくれたんやて。


中学になってから大雅はいろんな部活の助っ人として試合に出ることになって、偶然どこかの対抗試合で私を見かけたと。



「なんで女子の試合を見に来てたん?」


「あぁ~?それは、その…… ちょっとな。俺らの試合してる場所の隣やったからのぞきに行っただけや」



誤魔化そうとする顔がかわいいから許したるわ。



その時付き合ってた子がバレー部で、その子の応援に行った時に、アナウンスで“久保田杏奈さん!”って私の名前を呼ばれるのを聞いたと。



「お前、試合直前にうんこしとったやろ」


「してへんっちゅうねん!!」


「だって、呼び出されとったやん。お前、なかなか戻ってこーへんから試合が始まらんかった。でも、そのおかげで久保田杏奈って名前を聞いて…… 俺はお前を見つけたんや。言うとくけど、その時の彼女なんて本気で好きちゃうかったし、お前を見つけてからすぐ別れたから」