彼女に近付いた本当の理由。

今まで俺がしてきたこと。

彼女が正直に自分の気持ちを話してくれたように、俺もきちんと話して、話した上で彼女と向き合って行くべきなのだと思う。それが正しいことは分かっていながら、俺にはどうしても、本当のことを告げる度胸がなかった。

言ってしまえば、きっと彼女はもう会ってくれなくなる。それが怖かった。

はじめて俺の中に生まれた想いを、どうしても守りたかった──。

「……はい」

彼女の小さな、小さな返事を耳元で聞きながら、どちらのものとも言えない大きな胸の響きが体に伝わる。

彼女の甘い香水の匂い。

彼女の温もり。

はじめて俺は体中に広がる『幸せ』を感じていた。