ふと俺の右手が、彼女の結婚指輪の存在を感じる。

彼女は俺と会うときも指輪を外さない。

俺は彼女の指輪を指先で小さく動かしながら、ポツリと言葉を漏らした。

「指輪……」

「え?」

なんだろう。イライラする……

今まで人妻と付き合ってきて、こんなに指輪の存在が気になったのはじめてだ。

「外さないの?」

「何故?」

「何故? って」

彼女は本当に俺のこと、なんとも思っていないのか?

キュッと胸に小さな痛みが走り、イライラが更に募る。