「今日は肉じゃがにしようと思って」

俺たちはあの日以来、外で会うことはしなくなった。

今までどの女に聞かれても、絶対に家の場所は教えなかったのだが、気付けば『俺のマンションに彼女が来る』という形が当たり前になっていた。

鎌倉からの帰り道、彼女が「元くんがよければ、今度一緒にお料理しない?」と、言ってきたのが始まりだ。

「料理? なんで!?」

「毎日お弁当やカップラーメンでは、栄養が片寄って体を壊してしまうわ。一緒にご飯を作りながら、元くんが一人のときでもちゃんと自炊できるように、お料理教えてあげたいの」

「なんか、母親みてぇ……」

まるで母親みたいなことを言う彼女に思わずボソッとそう言うと、彼女は

「だって、そんなようなものでしょ?」と、笑って言った。

彼女にとって、俺は『男』というよりも『息子』という感覚なのだろうか? そこまで年が離れているわけではないのに……