辛かった日々を思い出させてしまうようなことは、聞くべきではないのかもしれない。

なにも聞かないで、黙って受け止めてあげるのが「大人の男」なのかもしれない。

せめて彼女から話してくるまでは……

そう思いながらも、どうしても気になって

「もう、大丈夫なの? 旦那とのこと」

と、いきなり離婚についての話を自分から切り出してしまった。

「……うん」

「あ、いきなりごめん。話したくなかったら、無理に話さなくてもいいんだけど」

「ううん。そんなことないわ……あ、いただきます」

気持ちを落ち着けるように彼女は紅茶を一口飲んだ。

俺も緊張を和らげようと、紅茶を啜る。