「紅茶のお陰かな……」

揃いのカップに入れた紅茶を彼女の所に運びながら、やっと出てきた言葉はそんなどうでもいいような物だった。

「ん?」

「今年は珍しく風邪ひかなかった」

「ちゃんと紅茶飲んでいてくれたの? あのときすごく馬鹿にしていたから、信じていないと思っていたのに」

「信じてたわけじゃねぇけどさ、たくさん買ってきてくれてあったから」

彼女ははじめて泊まりに来た日に「このあいだ約束したから」と、あの大荷物に紛れて紅茶も持ってきてくれていた。俺が飲みやすいようにとティーバッグになった物を、あのときに飲んだもの以外にもクラシックな物からフレーバーティーまで何種類も。

俺はそれらを、彼女と会えなかったあいだよく飲んでいた。彼女のくれた紅茶を飲むことで、一緒にいるような気がしていたからだ。

「よかったわ。役に立ったみたいで」

そう言い彼女はとても嬉しそうに笑う。