苦しいくらいの鼓動に堪えながら、ドアの前で一呼吸し、気持ちを落ち着け

「はい」

と、落ち着いた素振りでドアを開ける。

「こんにちは」

ドアの前に立っていた彼女は、離婚して気持ちが穏やかになったせいか、今まで見たことがないぐらいキラキラと輝いて見えた。

彼女の笑顔を見た瞬間、色々な想いが込み上げて胸が一杯になり、思わず彼女を抱き締めたい衝動に駆られた。

でも、それはできなかった。

抱き締めてはいけない気さえした。

離婚したということ以外、彼女はなにも変わっていないはずなのに、何故だか『距離』を感じずにはいられなかった。

彼女を部屋に通し、俺は無言でお茶を入れた。

この2ヶ月、彼女がどうしていたのか。

俺がどうやって過ごしていたのか。

どんな気持ちでいたか。

話すことはたくさんあるのに、電話のときと同じでどれもうまく言葉にはならず……

緊張なのか、なんなのか言葉が出てこなかった。