「櫻井!」
夕方からはバイトだった。
俺の勝手な思い込みで櫻井に酷いことをしてしまったことを謝るため、少し早めに家を出て、店から少し離れたところで櫻井が来るのを待っていた。
櫻井は俺の声に気付きこちらに走り寄ってきて、昨夜のことなどなにもなかったように、いつもと変わらぬ態度で
「今からだよね? 珍しいね。向井くんが早いなんて」
と、ちょっとからかうように笑った。
あまりにもいつも通りなので、もしかしたら付き合っているとか勘違いしての態度なのか? という不安がよぎり
「櫻井あのさ……昨日のことだけど……」
と切り出すと、
「分かってるよ。昨日だけのことなんでしょ?」
櫻井はあっけらかんとそう言った。