「嘘だろ」

頭が混乱して、どうしていいのか分からなかった。混乱する頭を抱えてうずくまることしかできない。

──はじめて、自分を殺したいと思った。

「元くん」

押さえ込んでいた涙が一気に溢れ出す。

体が震えて止まらなくなった俺を心配して優しく俺の手を握ってくれた彼女の手を、俺は強く払いのけた。彼女を汚い手に触れさせたくなかった。

「触んな!」

俺は馬鹿だ。

「あんただって気付いてんだろ! この手で他の女を抱いて帰って来たこと!」

一番ショックなのは彼女なのに。

彼女の気持ちを思いやれず、自分のことしか考えられず、彼女をもっと傷つけるようなことを口にしてしまった。

「それだけじゃねぇよ。あんたに出会う前、いや、会ってからも金貰って女抱いてた! 金が欲しくて、わざと金持ちの女引っ掛けて。あんたのことも、最初はそういうつもりだったんだ」  

今まで隠していた『汚い自分』。このタイミングで言う必要はなかったはずなのに。ずっと隠してきたその事実を話すことで、自分が楽になるような気がしてしまった。