「私が妊娠したと思ってショックだったの? そんなに私を想ってくれているの?」

そう言った彼女の声と手は微かに震えていた。

「すげぇ好きだって言ったろ……頭がおかしくなりそうなくらい、あんたが好きだよ……」

俺がポツリと本音を漏らすと、彼女はポロポロと涙を流し始め

「……違うの」

と、絞り出すような声で言った。

「違う?」

「それは私じゃないの……」

「ごまかすなよ。俺見たんだ。あの男があんたの肩抱いてエスカレーターで上がって行くところ。見間違いなんかじゃ……」

「それは確かに私だけれど……でも、子供ができたのは私じゃない」

「あんたなに言ってんの!? 言ってる意味がわかんねぇよ」

彼女は俺から体を離すと、言葉の意味が分からないで混乱している俺の目をまっすぐ見て言った。

「……妊娠が判ったのは彼の恋人なの」