今日、彼女は8時に家に来ることになっている。

彼女に会いたいのか、会いたくないのか。事実を確認したいのか、したくないのか。自分でもよく分からない。

ただ「家に帰らなければいけない」と心が騒いでいた。

俺は櫻井が寝ているあいだに部屋を後にした。

下駄箱の上に置かれていた鍵で外から鍵をかけ、ドアのポストに入れる。昔ユカの部屋に泊まったときに必ずそうしていたように。

一人で目を覚ました櫻井がどんな気持ちになるか、などということはどうでもよかった。

彼女を好きになってようやく落ち着いてきた俺の心は、誰かを思いやれないほどに再び荒んでしまっていた。