冬休みが明け、大学が始まった。
大学の中庭で偶然ヒサに会った。ヒサは俺と顔を合わせるなり
「お~! ゲン! エライじゃん」
と、感心したような口ぶりで言った。
「は!? なにが?」
「ちゃんと学校来て」
そう言って、ヒサはニヤリと笑う。
「ば~か! 当たり前じゃん!」
「はい? このあいだまでほとんど学校来なかった奴がなに言ってんだよ」
「俺、変わったんだ。今は超マジメだから」
彼女との約束通り、俺はサボることなく真面目に大学に通うようになっていた。お陰で彼女と会えるのは週一回程度になってしまうけれど、気持ちが通じた今はそれでもいいように思えた。
「ゲン、なにニヤケてんだよ!? その顔、ヤベぇぞ」
ヒサの声でハッと我に返り、俺は咄嗟に口元を手で覆った。
ダメだ。気を抜くとニヤケてしまう。
「いや、ちょっと……」
「ふ~ん」
ヒサは物言いたげな顔をして俺を見ながら、ニヤニヤしていた。