どうせお決まりの「家に帰ってこい」とか、「元気にしているか」とか思ってもいないことを並べ立てたような、そんな嘘臭い電話だ。

「ほっときゃいいんだよ。あんな奴」

「だめよ、そんなことを言っては。せっかくお母さん……」

「なんだよ! あんたには関係ねぇだろ!」

イライラが最高潮になり、思わず大声で怒鳴ってしまう。

「あんな奴、母親なんかじゃねぇよ! 離婚したと思ったら、あっという間に別の男の子供作るような奴なんだ! その男と一緒になるために、向井の血筋がどうとか、きれいごと並べて父親の姓のままいるように言ってさ!」

母親のことを口にしたら、今まで溜まっていた不満が抑えられなくなり、気付けば誰にも言えずに悶々としていた気持ちを彼女にぶつけていた。

「親父も親父だし! なんなんだよ。高校生から一人暮らししなきゃいけねぇ状況なんて、普通じゃあり得ねぇよ! そんな離婚とかするならさ、はじめから結婚なんかしなきゃよかったじゃん!」