電気は……

「ついてる」

思わずポツリと呟いた。

俺の部屋に電気がついている。

家で俺の帰りを待っていてくれる人がいる。

一人暮らしを始めて2年8ヶ月。今まで明かりのついている部屋に帰ったことはなかった。

その相手が彼女であることはもちろん嬉しいのだけれど、それ以前に久しぶりに味わうこの感覚に、なんだか分からないけれど胸が熱くなった。

不覚にも潤んでしまった目をゴシゴシと両手で擦り、

「よし!」

と気合いを入れてから、俺は気を取り直してマンションへと自転車を走らせた。