千夏は恥ずかしさを隠すため、目の前の蝋燭の火を一気に吹き消し、
「いただきますっ」と手を合わせて大きなケーキにフォークを突き刺した。

大きなホールケーキをちまちま切らずにフォークを突き刺して食べるという行為を一度やってみたかった。

口いっぱいに頬張ったケーキはとても甘い。

ぱくぱくと、
次から次へとケーキを口に入れていくと、

突然京平が笑い声をあげた。

千夏はケーキを口に頬張ったまま京平を見た。

「ばかやろ、行儀悪いぞ」

そう言って笑いながらも京平は目に涙を浮かべていた。

「いきなり、びっくりするだろ」

「はにが?」

口の中のケーキが邪魔して千夏の声は言葉になっていなかった。

ごくりとケーキを飲み込んでもう一度尋ねる。

「何がびっくりすんの?」

京平は袖で涙を拭うと、
大きく息を吐き出した。