「ぁ……、ぁの…。」


掴んでいた制服を離し、雪は彼に話しかけた。注意しながら聞かないと聞こえないくらい小さな声だったが、彼には十分に聞こえていたようで、今度は体毎振り返り、雪の視線に合うように少し体を屈める。

彼が体を屈めたことによって、少し彼との距離が近くなったことにびっくりした雪は小さく2歩程後ろに下がった。


「ぇ……、ぇっと、その、あの……。」


なかなかうまく言葉にできなく、出てくる言葉がどもってしまう自分に嫌気がして、目にうっすらと涙が浮かぶ。


ポンッ―――


ふと頭の上に暖かいぬくもりを感じ、雪は下げてた顔を上げて彼の方を見る。すると、目じりを下げたとても優しい顔で雪を見る彼の姿があった。


「大丈夫………。ゆっくりでいいよ?ちゃんと聞いてあげるから。だから、言いたいこと、言ってみな?」


その言葉に、雪は驚いた。
いつも、他人と話す時は焦って先ほどの様にどもってしまうことが多い。そのため、なかなか人とうまくコミュニケーションがとれず、話もなかなか聞いてもらえる機会が無かったため、人見知りの性格に拍車をかけてしまっていた。

しかし、今、彼は自分の話を聞いてくれるんだと思うと、すごく嬉しい気持ちになると共に、さっきまで慌てふためいていた雪の心はすごく落ち着いていた。