2月11日。


風の強い、曇り空の寒い日だった。

営業車でも暖房を入れて冷たい手を暖めるほど。

少し外に出ただけで全身が冷たくなるくらいに冷えた日だった。



この日も仕事が終わり、8時前くらいに家に帰った。

いつもと同じ、何も変わらない日。


そう思っていた。


でも・・・全然違った。

これから壮絶な出来事が起こる。

その幕開けはまず寒くてたまらない最悪な日ってとこからだったと思う。




寒さをこらえながらやっと家に入ると部屋が明るいということに気付いた。


ここで真っ先に思うことって”香織ちゃん、来てるんだ。”だと思う。



でも俺は部屋に入ったときの香りがいつもと違うということにすぐ気付いた。

そしてその香りが懐かしい、そして変わってないということにも。


この香水を香織ちゃんが偶然選んでつけているということは考えられない。


きっと部屋の奥にいるのは・・・・・いつの日だったか、突然消えた女。


悠嘉だろう。



ドアを開けた音は中にいるだろう、悠嘉も聞こえているはず。


中に俺が入ってこないことも気付いてるだろし、躊躇してるんだとわかっていると思う。

でも、簡単に中に進むわけにはいかなかったんだ。



そこに見覚えのない派手な靴と、見覚えのある香織ちゃんの長いブーツもあったから。