「真斗、わたし北海道に帰るね。だから本当に真斗とは今日でお別れなの。」


車に歩いているときに急に悠嘉が言った。

驚いて悠嘉の顔を見ると俺に喋らせないようにか、悠嘉はベラベラと喋り続けた。


「わたしさ、親いないんだ。記憶がある時から施設にいたの。」


それから聞いてもいないのに過去の話を始めた。


悠嘉が本気で俺に語ってくれたのはこれが2度目だと思う。

あの日のことと、今日。

こんな形で知りたかった悠嘉の過去を知ることになった。


「友達は親がたまに迎えに来たりしてたけど・・わたしは来なかった。でもわたしは1人じゃなかったの。キラリっていう名前の1つ下の子がいてね。」


その時に思い出した。

悠嘉が去った次の日に見つけたあの絵。

真ん中にいた子にきらりという名前っぽいのが書いてあった。


その時目の前にベンチがあったからそこに悠嘉がピョンと座った。


黙って立っている俺を見て更に続けた。



「キラリね、わたしの妹なんだ。わたしが施設に預けられて、更にキラリまで預けに来たらしいの。うちの親。最低でしょ??でもキラリは最後まで親が来てくれるって信じてたんだ・・・。姉妹って話は小学校の高学年の時にお互い聞いたんだけどね。そのキラリ、北海道で今、1人暮らししてる。きっと淋しいはず。でもわたし北海道の田舎に帰るのが嫌で行かなかったの。」


下を見ながら足をパタパタとさせ、落ち着きがない様子だった。

その瞬間パッと俺を見た。

その目はすごく綺麗だった。



「やっと決心がついた。何年ぶりかに昨日キラリに電話したら帰って来てほしいっても言われた。だからわたし・・・北海道に帰るね。」


「・・・いつ??」


「今日・・・もうこのまま発つ。きっとこのまま居たら・・・真斗から離れられなくなる・・・。」


そう言うと目に涙を浮かべた。