座っている菜束を。



「小玲!」




彼女の肩が揺れる。


「どーしたの…こんな所で」

「…うん」

碧は、菜束の左頬が赤いことに気が付く。
そして、目が赤いことも。


「何で泣いたの?」

「…ううん」

「ね、何で俺のこと見てくんないの」


碧が菜束の左の頬に手を触れた時、菜束の目から涙が溢れ出た。

「どうしたらいいのか判んな…くて」


碧の手をそっと押し返す。





「ごめんね」






踵を返して、菜束は去ってしまった。




「こ…」







小玲。
それは続かなくて。



碧は視線を落とした。