「…私も戻る。芹沢も綿貫気になるなら何とかしたげなよ。可哀想」
白羽がその言葉に反応する。
「可哀想って誰が」
「綿貫が!!どーせ勝手に一方的にキレたとかなんでしょ?謝んなよ」
パタン。
白羽が本を畳む。
「碧の味方?」
「別…にそういうんじゃないけど、熱まで出してさ…」
「俺が熱出したら俺の味方してくれたの?」
「したかもね」
白羽が薄く笑う。
「嘘。片桐は碧の味方でしょ?それに言われたから」
「…何を」
「保護者気取んな、って、ね」
時間が止まった。
「な…にそれ。綿貫が?」
「そうだよ」
「それ綿貫本気で怒ってるじゃん」
「俺だって怒ってるから」
「あーそ。もう絶交すれば。じゃね」
音楽室が、静かになる。
白羽は、ピアノに近付いた。
──あの曲…
弾きたくなった曲は、
碧が耳を塞ぐ程嫌いな、
彼の父親の作った曲。