痛くは無かった。

 それが奇妙な事なのか、悠人は知らない。

 視界がぼやけている。

 血は、出ているのだろうか。

 身体は、まだ繋がっているのか。

 わからない。何もわからない。


 これが、死なのだろうか。


 身体に何か柔らかいものが触れた気がした。

 耳に、何か言葉が聞こえた気がした。


 それが気のせいだったのか。

 それすらわからないまま、悠人の意識は、


 溶けるようにゆっくりと、消えた。




 そうして、何事もなかったように。

 世界は時を刻み続け、

 やがて、いつもと同じように。

 夜が――明けた。