少女の右手が、そっと持ち上がる。

 刹那、その手に長い柄が握られた。

 柄の先には、漆黒の大鎌。

 刃が示す先は、悠人。


 軽々と、鎌が振り上げられる。

 それは、さながら死神のようだった。

 それとも、死神そのものなのか。


 状況に理解が追いつかない。

 思考は空回り、身体は動かない。

「――ぃ」

 嫌だ、と。

 それだけ思うのがやっとだった。


 かすかな風斬り音と共に、

 鎌が悠人に向け振り下ろされた。


 刃は、月明かりを反射しながら。

 悠人の身体に、深々と突き刺さった。