一美は自然に悠人の隣へ並び、話しかけてくる。

「髪、伸ばしてたんだね」
「あ――う、うん」

 悠人はぎくりとしながらも、なんとか頷いた。
 やはり、注目される。
 人は意外と、他人について見ているものなのだ。

「変、かな」
「そんな事ないよ。ただ……」
「ただ?」
「校則違反」

 楽しそうに言って、髪に手を伸ばしてくる。
 黒いゴムで束ねた髪が、そっと撫でられた。

「あ、さらさらだー。羨ましい」
「ちょ、ちょっと仁科さん?」

 彼女から、そんな事をされるのは初めてだった。
 気を許してくれている。
 そう感じて嬉しくなる反面、苦しくなる。

 変わってしまった身体。
 そのことが思い出し、言葉に詰まる。