あの日、隆志が言った言葉を
どうしても許せなかったのは
きっと、隆志に対してと言うより
自分に対してだった。
いつ崩れ落ちてもおかしくない砂の城を
アタシ達は
必死に組み立てていた。
抱き合うことで
埋めていた風穴。
まるで一枚剥せば錆だらけのメッキでできた
あまりにも脆い絆を
積み重ねて
隆志はアタシの過去を
どこかで諦めながら。
もう………
アタシの手で終わらせよう。
ジレンマに苦しんでるであろう隆志を
解放してあげなきゃ………ね。
アタシは
ずっと押せずにいた発信ボタンを
片方の親指じゃ押し切ることができなくて
両手で押した。
発信ボタンって
こんなに重かったっけ………。