「月ってさ、少しずつ満ちて満月になった次は


少しずつ欠けて
新月になるんだよ。


で、また欠けて…って

それをずっと繰り返すんだよ。


上弦の月とか下弦の月って聞いた事ない?


今はちょうど上弦の月なんだ。」



話しながらアタシの隣りに立った浩介の横顔は


闇に佇む月と同じように


どこか、悲しそうに見えた。




『…よく知ってるね。』



「空ばっかり見てたからね。」



『なんで?』



そんなアタシの質問に、浩介が答えることはなかったけど


彼もまた
何か、闇を抱えているんじゃないかと思った。



そう言えば
アタシはいつも、自分の事ばかりで



浩介の事は何も知らない。