「ちょっと待てって。せっかちな奴だな。」


「よく言われるよ。」


ケラケラと笑う浩介は、やはりまだ少しいけ好かないが。



「財布は自分で返せ。」


「なんでー?」



「……仕事までの時間でいいから、ユキと一緒に居てやってくれ。」



不本意だが
今、ユキをひとりで泣かせるくらいなら……


俺が、そうさせたのだけれど………。



は?

と首を傾げる浩介。



「俺は……」


と、言葉を詰まらせた俺の手から


財布を受け取り


「わかった。」


と、なんとなく状況を理解したのか、


浩介は、アパートの入口へと歩き出した。