「何?苦情?俺ら、うるさかった?」



俺"ら"か…。



『いや。ユキは居るか?』


頭を掻きながら話す男の


軽い口調にイラつきながらも


表情を動かさずに聞いた。




え…


と言うように、
動きをぴたりと止めた男は


頭から手を静かに下ろしながら


「あんたもしかして…タカシって名前?」


俺は何も答えない代わりに


男を睨み付けた。



「あー……ちょっと待ってて。」



そう言って、部屋の中へ戻って行く男の後ろ姿を


ため息越しに眺める。



"あー……ちょっと待ってて"


そう言った時の
男の"ヤバい"とでも言いたげな顔。


手には、ユキの財布を持っていた。



俺の中では
益々疑惑だけが膨らんだ。