緩んだ掌から
スルリと携帯を落として
ようやく我に返る。
『隆志?聞いてる?』
「あ、あぁ、ごめん……何て言った?」
ごめん……の中には
違う意味も含まれていたかも知れない…
『だからね、毎日同じ質問するねって言ったの!』
「まぁ…でもお前、どうせまともに答えねぇじゃん」
今日はやけにあっさり
素直な意見を言ってしまったな…と
電話口で苦笑う。
「…答えてるよ。」
まぁ、答えてはいるのだが…
"まともに"ではない。
どこに住んでいるのか。
いつも何をしているのか。
そんな質問には
決って答えないじゃないか。
秘密主義なの、
なんて言われたこともあったな。
秘密主義……
それを言われてしまえば
俺はもっと秘密主義なのだから
何も言えない。