「えっと…
まぁ、その…

部屋に戻ります!」


俺の重たい雰囲気を感じたのか振り向いて部屋から出ようとする。




行ってしまう


そう思った瞬間


思わず後ろからドアノブを持つ手を握りしめて引き留めた。



触れた手が柔らかくて切なくなる。

「また逃げるのか。」

いつも俺から怯えてスルリと逃げていく。

そう思ったら声にしていた。

脅かしているのは俺自身だけれど。

今は…

行かないで欲しかった。

俺の言葉に振り向く。
怯えた、泣きそうな顔と目が合う。


何も言わない。



その瞳を見ているとどうしようかと悩む。

泣かせたい訳じゃない。


何も言えないでいると目を逸らされてまた背を向けられた。