「そんな高さじゃ死ねないわよ」

ふいに少し高めの芯のある声を後ろからかけられて。
空が、視界から、消えた。
あと一歩を結局ふみとどまるハメになって俺は軽くため息をついて振り向いた先に。
見覚えのある顔をした奴がセーラー服の上に薄いカーディガンをはおり屋上の出入口のドアにもたれるようにして立っていたのだ。


無表情に近かった。


彼女は。


そして右手には鉄パイプがにぎりしめられていた。

…不審……。

「運が良ければ内臓破裂を味わえるかもしれないけれど。」

凛としていてけれど吐き捨てるようにそう 言った。

「内臓破裂、か…。それはいただけないな。」

俺は金網を片手で掴みながら苦笑いを浮かべた。

「じゃあやめておくのね」
彼女は2年2組 24番 角村 夕 (つのむらゆう)だ。

それが彼女の名前とそうおうしい番号に記号だ。

言っておくとこれが初めての会話。